Creators' Talk

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THE NORTH FACEを知るクリエイター達へのインタビュー

Yoichi Yasuoka

www.hacknet.tv

安岡洋一
株式会社メメックス代表/ハックネット・ディレクター
ニューヨーク州立大学卒業後、1992年まで現地広告代理店に勤務。帰国後の1996年、株式会社メメックスを設立。同時に、洋書を媒介として多くの才能ある人々が出会う「洋書ハックネット」を立ち上げ、現在に至る。

















interview

代官山と恵比寿を結ぶ裏通りに位置するブックショップ「ハックネット」。ショップを囲む大きなウィンドウからは色とりどりの本が並ぶ店内の様子が伺え、道行く人々の関心を誘っている。ショップに足を踏み入れてまず驚くのは、壁いっぱいに設けられた本棚に所狭しと並ぶヴィジュアル書籍の豊富さだ。そして、それらの本をひとつひとつ眺めていくと、柔軟かつユニークな視点を持ってあらゆる国とジャンルから集められた“デザインに関する本”であることがわかる。 今回インタビューに応じてくれたのは、この「ハックネット」のディレクター安岡洋一氏。他の本屋とは一線を画すこのブックショップはどのように誕生したのか。安岡氏の現在の活動内容やショップのコンセプトに関する質問から始まったインタビューは、氏が最近本格的に取り組んでいるというトレーニングにまで話が及んだ。


はじめに、安岡さんの現在の活動内容を教えてください。


Yoichi Yasuoka(以下YY):デザイン関連のヴィジュアル書籍を扱う書店「ハックネット」のディレクター、つまり、基本的には本屋の主ですね。また、ハックネットから派生してデザイン発想支援という業務も手がけています。ハックネットに集まるものは本であると同時に情報でもあり、私は自分たちの仕事を情報集積産業と捉えています。そこで、世界中から集まるそうしたデザインの情報を、それを必要とする企業へ提案し、活用していただくお手伝いをしています。


ハックネットのショップ・テーマを教えてください。


YY:現在ハックネットは代官山店のみですが、もともとは大阪でスタートしたショップです。その大阪店のオープン当時のテーマは「頭の散歩」。通常の書店では面出しや平置きなど、本の表紙が見えるような設置方法が定説です。そこをあえて海外のライブラリのように本を小口で並べることで、「ここにはどんな本があるのだろう」とお客さまに知の散歩をしていただく。そこからスタッフとの会話が生まれ、提案型の接客に繋げる、そんな仕掛けを作りました。また、「頭の散歩」というテーマをショップ全体の空気感で伝えていた大阪店に対して、代官山店では本棚の上段にある本を面出しにしたり、希少価値の高い絶版本を手の届かないところに置いたりと、より視覚的に、お客さまの五感に響くような空間を意識した作りになっています。


扱う本をセレクトする際、重視するポイントはありますか?


YY:デザインの要素が何らかの形で本に落とし込まれているかどうか、それがセレクトのコンセプトです。例えばアート本であっても、エディトリアル・デザインが面白いものであれば、私たちはそれをデザイン本として紹介しています。


本のセレクトは安岡さん自身で行なうのですか?


YY:そうですね。スタッフから情報をもらうこともありますが、買い付けや発注作業などメインの業務は16年間ずっと私一人でやってきました。最初の3年間は毎月のように海外へ出向き、オランダのアムステルダムからベルギーのアントワープまで電車で向かうなど、都市から都市へと回っていましたね。そして、それぞれの街に根づいている専門店を巡り、お店の方々に話を伺ったり、本棚の端から端まで目を通して必要な情報を得ていくスキャン作業を何時間もかけて行なったり。当時は自分の足で稼いだ情報が多かったですね。そもそもハックネットのアイデアの起点は、日本の通常の書店では扱っていない、けれど、紹介する必要のある書籍をショップのコンテンツとして幅広く揃えるということでした。現在では私たちが海外から直接仕入れて他の書店に卸している本もあるので、ハックネットにある本が他の書店に置いてある場合もありますが、情報の発信源はあくまでもハックネットです。私たちの存在価値はそうしたところにもあるのかもしれません。


海外の広告代理店でデザイン制作の仕事に就かれていたそうですが、書店を始めるに至ったきっかけは何だったのでしょうか?


YY:書店を始めるために日本へ帰ってきたのではなく、プライベートな事情で日本に戻らざるを得ない状況だったのです。ですから、当初は海外との接点を失わないよう、自分がいつでも海外へ行ける環境を作るために書店を始めたと言えます。また、日本で物づくりをしている方々やそのネットワークについての情報を得たいという思いも動機のひとつでしたので、それが書店でなくカフェでもよかったわけです。「ブックストア&カフェ」という計画もありましたが、物販も飲食も未経験でしたし、いろいろな要素を盛り込みすぎると中途半端なものになってしまうだろうと、精査を重ねた結果、最終的に“本屋”というシンプルな形態を選びました。


本というメディアが持つ最大の魅力は何だと思いますか?


YY:情報量に対して適正な価格で、バランスよくコンパイルされているメディアだと思います。


デジタル・メディアの多様化と普及を受けて、紙媒体業界は非常に厳しい状況にありますが、紙媒体の役割は今後どのように変化していくと思いますか?


YY:本の存在はなくならないと思います。ただ、本の在り方は変わっていくでしょうね。生活者にとってメディアの選択枠が広がるにつれ、情報ツールは電子書籍やウェブへ移行していくでしょうし、印刷/装丁される必要のあるものが淘汰され、本はよりコレクタブルなものになっていくと思います。


そのような状況下で書店に求められる要素はどこにあると思いますか?


YY:書店が単体で存在していくことは困難になり、ショールーム化していくかもしれませんね。和書の場合はまだ存在価値があるので、そうした状況になるまでにはもう少し時間がかかりそうですが、私たちのような洋書の専門店は、ウェブでは見つけられないような本や、紹介するに値する本を扱うようになり、よりプロフェッショナル化していくと思います。ヨーロッパでは専門店の位置づけが高く、世界中のお客さまを相手にできるのでビジネスが国際市場へと広がっています。それに比べて日本の場合はマーケットが国内に限定されがちで、費用対効率や収益性が低く、専門店が育ちにくい環境です。今でこそハックネットには海外からのお客さまが増えましたし、高名なクリエイターの方にも来店いただいていますが、なかなかタフなビジネスなので、私自身も悩んでいるところです。


今後挑戦したいことがあれば教えてください。


YY: 好奇心旺盛なので、挑戦したいことはいろいろとあります。ただ、これまでを振り返ってみても、自分が関わりたいと思うビジネスは常に、既成されたものではなく、新たに道を拓く必要のあるものなのです。けれど、世界経済危機という現在の状況下では、かなりの努力をしたとしても得られるものは限られている。そこで、経済や環境が好転したり、情熱を注ぐことのできる新たな道を見出すまでは、自分自身を体力のある良好なコンディションに整えておこうという思いに至りました。そうすれば、状況が変化した時にスタート・ダッシュができますし、次の段階への準備も素早くできるのではないかと。現在、週に3日はジムへ通い、パーソナル・トレーナーを付けて真剣に取り組んでいて、身体を動かすことが習慣になっています。以前はジムに入会しても、1ヶ月を過ぎると幽霊会員になってしまっていたので、今回トレーニングを始めた当初は自分を追い込むためにも「文化系アスリートを目指します」と公言していました(笑)。友人に紹介してもらった現在のジムは、多くのアスリートが通う本格的なジムなのですが、オーナーと人間的な波長が合い、人の縁がいい形で好循環を生んだわけです。


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