Creators' Talk

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THE NORTH FACEを知るクリエイター達へのインタビュー

Daisuke Oguchi

www.goldwin.co.jp/tnf

小口大介
1973年北海道出身。THE NORTH FACE札幌店スタッフ、同店の店長、原宿店店長を経て、THE NORTH FACE初のプレス担当に。現在、株式会社ゴールドウイン アウトドアスタイル事業本部プレスチーム・リーダーを務める。また、2010年4月、東京・神宮前にオープンしたコンセプト・ショップ「THE NORTH FACE STANDARD」のプロデュースを手がける。















interview

コンセプト・ショップ「THE NORTH FACE STANDARD」について広く深く話を聞いた前半に続き、後半のインタビューでは、小口大介という人物のバックグラウンドや軌跡に触れる。19歳で地元札幌のTHE NORTH FACE直営店でアルバイトを始めた彼が、18年後、東京の真ん中にコンセプト・ショップをオープンさせるまでの道のりには、どのような出会いがあり、想いがあったのか。これまでの人生の半分を過ごしたTHE NORTH FACEに、彼が見る哲学とはどのようなものなのか。柔軟性に富むオープンな人柄の奥にある、まっすぐな心意気に触れ、励まされると同時に、身の引き締まる思いがした。


小口さんは札幌出身ですが、TNFへ入ったのはいつ頃なのですか?


Daisuke Oguchi(以下DO):昔から人とコミュニケーションすることが好きだったし、洋服も好きだったから、学生時代は洋服屋のスタッフになろうと漠然と考えていて。高校卒業から1年後の19歳の時、札幌に大きなショッピング・モールがオープンすることになり、そのモールに出店するあらゆる洋服屋へ手当たり次第に応募したところ、たまたま受かったのがTNFだったんです。


スタッフになる以前からTNFのことは知っていましたか?


DO:実はほとんど知らなかった。それに、アウトドアにきちんと触れるようになったのも19歳でアルバイトとしてTNFへ入ってから。当時も今のようにアウトドア・ブームで、GRAMICCIのクライミング・パンツがファッションとして流行っていたりして。その頃一緒に遊んでいた札幌のセレクト・ショップの店長やスタッフがフライ・フィッシングやキャンプが好きな人たちだったので、よく連れて行ってもらったけれど、その時の彼らのアウトドア・スタイルがかっこよかった。自分がアウトドアへの関心を強く持つようになったのは、そうしたファッション的な要素がきっかけだったんです。


札幌店スタッフからプレス担当者になるまでの経緯を教えてください。


DO:札幌店で働き続けて22歳で社員になり、26歳で店長になった。その頃にはすっかりアウトドアにはまっていたから北海道という土地は最高のロケーションで、「自分は札幌から出る気は無い」と公言していた。けれど、29歳の時に「このままでいいのか…」という気持ちが芽生えてきて。そこで、TNFの販売部長が北海道に来た際、一緒に釣りへ出かける車中で「やっぱりどこへでも転勤します」と伝えたら、その1週間後に「次の春から原宿店の店長になってもらう」と彼から連絡をもらって。原宿店の店長に抜擢されるなんて想像もしていなかったけれど、そんな大役を任せてもらえるのはラッキーだなと。札幌店では自分なりのやり方で売り上げを伸ばしていたから、東京でもやっていけると思っていた。でも実際は、それまでのやり方が原宿店では全く通用せず、着任後の1、2ヶ月は売り上げをかなり落としてしまったんです。


その要因は何だったのでしょう?


DO:札幌店は北海道という土地柄もあって、客層が広くても基本的にはアウトドアのフィールドが根づいていた。だから、ひとりひとりのお客さんに対して丁寧に商品説明をしながら、時間をかけて接客していた。でも、原宿店の場合はカルチャーの色が濃くて、店前の通りを行き交う人を見てもアウトドアの匂いは微塵も感じない。そんなふうに客層も異なるわけだから、当然、札幌店と同様の接客では通用しなかったわけです。どうしようかと考えていたある日、DJのMUROさんがショップに買い物をしに来てくれた。しかも「TNFがすごい好きだ」と言ってくれて。MUROさんのような人にTNFを着てもらうのはブランドにとって良いことなんじゃないかと思い立ち、TNFとして彼のサポートをしたらどうかと会社へ企画書を提出したんです。会社からの許可を得てすぐにMUROさんへ直接お願いしに行くと、「TNFがそんなことを言ってくれるなんて夢にも思わなかった」と、すんなり受け入れてくれた。ヒップホップ・カルチャーが隆盛を極めていたこともあって、MUROさんがTNFを着てメディアに出てくれたことで大きな反響を呼び、また、同年の秋冬にFuturaとのコラボレーション企画があったりと、メディアへの露出が増えるにつれて売り上げも一気に伸びた。それまでTNFにはプレスという職種がなくて、メディア露出の機会を全て無駄にしていた。そこで、しっかりとプレス業務を行なえば売り上げに繋がるはず、だから原宿店の店長兼任でプレス担当者にしてほしいと会社に申し出ました。そしてプレス担当に就き、今年で4年目になります。


18年間もTNFの一員としてブランドの中にいるわけですが、小口さんの視点で捉えたTNFの姿勢とは?


DO:企業ポリシーである「Never Stop Exploring(飽くなき探究心)」という言葉がTNFの真実だとつくづく感じます。TNFは探究心を抱き続ける世界中の名だたるアスリートと契約をして、冒険や登山といった彼らのプロジェクトを徹底的にサポートしている。そして、冒険のレベルを向上させるために、彼らが現場で感じたことをフィードバックしてもらい、それらの生の意見を参考にしながら真摯なものづくりを続けている。その結果、これまでに無い全く新しいテクノロジーや製品を生みだしているんです。その一貫した姿勢が「飽くなき探究心」という言葉に集約されていると思う。あと、今、世界でも日本のTNFが最先端と言われていて、それは事業部長である渡辺の尽力によるところが大きいと思っています。世界的にヒッピー・ムーヴメントが全盛の1968年に創設したTNFは、自然の素晴らしさと同時にアートなどのカルチャー的要素も取り入れたブランドだった。渡辺が現職に就いた際、そうしたブランドのルーツにあるアートやカルチャーといったスピリットを、テクニカルな側面と同時に取り入れ、その両方を融合したブランドとして確立していくべきだという指針を提示したんです。だからこそ今のTNFがあるのだろうし、TNFがアウトドア一辺倒のブランドであったなら自分の居場所はなかったと思います。


先述のTRIPSTERをはじめ、Kuniyuki TakahashiやHatosなど多くのクリエイターとのネットワークを築いていますが、コラボレーションする相手はどのように選定しているのですか?


DO:相手がどんな人であっても必ず1回は会うようにしています。それがプレスルームでなくても、カフェでも山であってもいい。とにかく直接会って話をしてみることで、その人の考え方や姿勢が見えてくるから。そして、自分の仕事に対して探究心を持って前向きに取り組んでいる人かどうか、その視点で相手を選んでいます。また、そうした相手であれば「この人と一緒にやればうまくいく」というシンパシーのようなものを感じることができる。逆に「うちと一緒にやればこんなに有益です」といったプレゼンテーションをされても関心が湧いてこないし、その人の背景にある数字や名声には全く興味が無い。仕事というのは人と人とがやるものだから、最も重要なのは相手の人間性でしょう。自分がやるべきことを徹底的にやる、そういう人と一緒に仕事をすることで自分たちが目指す本質的なものを作っていける。そして、そうしたお互いのパワーが融合することで、ジャンルを越えた更なるパワーが生まれるのだと思います。


TNFのプレスとして一貫して心がけていることはありますか?


DO:「TNFはこういうブランドなんだ」という姿勢を明確に示すこと。さらに、その姿勢にブレがないこと。あと、誰かとコミュニケーションしたり何かを作ったりといった1つ1つの業務や行動の質を高めていかないと、いいプロモーションはできないと思っています。それを教えてくれたのが、Precious Hallのオーナーである小川さん。Precious Hallは札幌のすすきのの外れで水商売とされるクラブを16年間も続け、世界中のDJたちから「Precious Hallでプレイしたい」と言われるほどの敬意を集めている。その理由は、スタッフやハードウェアといった全てに対して一切の妥協をせず、本質を追求し続けているからだと思う。小川さんから直接アドバイスをもらったわけではないけれど、彼らの姿勢を見ていると、自分も仕事に対して妥協をせずに質を高めていかなければと痛感します。


一般的なプレス業務以上の活動をしているように映るのですが、小口さんのモチベーションの根源となっているものは何ですか?


DO:やるならばきちんとやりたいという思いが根底にあるんです。できないのであればその場にいる必要はないと思うし、自分がやりたいからこそ今この場所にいるわけだし。仕事の内容がどんなものであれ、自分は自分のできる仕事のプロでありたいと思っています。


小口さんの個人的な今後の展望を教えてください。


DO: 具体的な展望のようなものは特にありません。ただ、これまでの自分の人生を振り返ると3年のスパンで何かしらの変化があると感じていて。東京に出てきた時、3年やって駄目だったら札幌へ帰ろうと思っていたし、実際東京に着任して3年目でプレスになり、プレスを3年間やってSTANDARDというショップを手がけることができた。世の中はどんどん変化していくし、次の3年後にどうなっているかはわからないけれど、その時の流れにスムースに乗れるよう、しっかりとやっていきたい。そのためにはやっぱり常に現場にいて、前述の「現場感」を味わっていくことが大事なんだと思う。あと「ライフスタイルを楽しむ」ということを提案していきたい。日本人は自分の人生を楽しむことが少し下手だったりするけれど、TNFを通して自然の素晴らしさを伝え、さらに、仕事も遊びも精一杯にやって人生を満喫するということを多くの人たちへ広めていきたいと思っています。


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