Creators' Talk

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THE NORTH FACEを知るクリエイター達へのインタビュー

Kuniyuki Takahashi

www.myspace.com/kuniyuki

高橋クニユキ
札幌を拠点に活動するKuniyuki Takahashi。彼の音楽は、国境を問わず常に独特の世界観を持ち、世界各国のプロデューサー、DJから高い評価を得ている。Joe Claussell主宰[Spiritual Life]傘下の[Natural Resource]から自身のホームタウンであり、札幌の名クラブをトリビュートした曲「Precious Hall」をリリース、4Heroの2000Blackのコンピレーション参加、Ananda Project「Cascade of Colour」のリミックス・リリースなど、ジャンルレスな音楽形態を持ちながら、日々新しい音楽の形をクリエイトしている。現在まで3枚のフルアルバムをmule musiqより、そして12インチやリミックスなども多数リリースしている。








interview

ホームタウンである札幌を拠点に精力的な音楽活動を続け、今や世界各国のビッグネームからも高い評価と厚い信頼を集めるKuniyuki Takahashi。彼が生みだすのは、躍動的な音の粒子が感情へ届き、情緒溢れる温かな空間が果てしなく広がっていくような音の世界。昨年11月にリリースした3rdアルバム『Walking In The Naked City』では、石橋文夫、Henrik Schwarzなど名だたるアーティストをゲストに迎え、さらに色彩豊かなストーリーを作りあげている。そうした希有な音楽性はどのように育まれたのだろうか。とあるイベントへのDJ参加のため東京を訪れていた彼にインタビューを試みた。飄々とした佇まい、温かみのある語り口調、丁寧に選ぶ迷いのない言葉、それらの根底にあるユーモアと優しさ。共に時間を過ごすほど、彼の音楽は彼の人柄そのものだと感じずにはいられなくなった。インタビュー前半では、音楽に出会い、音楽を作る歓びを知り、現在の活躍に至るまでの過程について、じっくりと語ってもらっている。


現在の記憶に残る、最初の音楽体験はどのようなものですか?


Kuniyuki Takahashi(以下KT):初めて音楽を体験できたと思うのは、ちょっと恥ずかしい話ですが、小学6年の担任の先生が吹いたリコーダーを聴いて魅了された時です。音色といい、吹き方といい、クラスメイト全員が彼の吹くリコーダーに惹き込まれました。それが、「美しい」とか「すごい」とか、音楽に対して初めて感動を覚えた体験だったかもしれません。


その後、自分で音楽を作るようになるまでの経緯は?


KT:両親も音楽がとても好きだったので、サウンドトラックなどの映画音楽をはじめ、日常生活の中でも音楽は自分の近くにありました。そして、自分で楽器を持てるようになった時期に中古のシンセサイザーに出会ったんです。鍵盤があるのにつまみがたくさん付いていて、「この楽器は何だろう」と触れてみると不思議な音が出た。それは自分の想像を越えた新しい音であり、当時子どもだった自分が抱く未来像がそこにあった。お年玉ですぐにシンセを買って、それから実際に音楽を作る作業を始めました。


全て独学ですか?


KT:そうですね。音楽とは言い切れないかもしれないけれど。カセットテープにまずひとつの音を録音して、それを流しながらさらに別の音を重ねたり。そんなふうに初めて作った楽曲が『宇宙大戦争』というタイトル(笑)。「ここで爆発音が欲しい」とか「UFOが飛んでくる効果音を」とか、自分の中にあるストーリーを音で表現して、音楽を作る歓びを感じるようになったんです。


当時作っていた楽曲と現在の楽曲に共通点はありますか?


KT:ストーリーがあるということ。音楽の素晴らしいところは、自分にしかない風景や居場所を見つけられること。表面的には音楽だけれど、音楽とは別の何かが心の中に形として残る。そういった点が、自分が作る音楽において当時から現在まで共通していることだと思います。


聴くことと作ることでは、音楽の楽しみ方は異なりますか?


KT:音楽を聴くことは大きな歓び。他の人が作った音楽に対しては素直に感動したり、かっこいいと思ったり、そういう受け入れ方をします。それは人との出会いにも近い気がする。そして、音楽を作ることは、自分の心の中にあるものを表現する作業。人間は、日常の中で感じたことを心に蓄積して、それを自分にできる表現方法で伝えながら生きていると思うんですよ。絵を描いたり、人と会話をしたり、あらゆるフィールドでの表現方法があって、それが僕にとっては音楽なのだと思います。


では、絵や言葉などさまざまな表現方法がある中で、音楽だからこそ表現できるものは何だと思いますか?


KT:比べたことはないけれど、音楽は純粋にその「瞬間」を作るというか。自宅のステレオで聴くのかライヴで聴くのか環境によって異なりますが、共有できる感動や瞬間があるのが音楽なのだと思う。でも、もしかしたら、それは絵や言葉などのどんな表現であっても同じなのかもしれないけれど。


音楽以外の表現に触れて、自分の表現に近いと感じたことはありますか?


KT:観た時にシンパシーを受ける映画とか、絵を見ていてその色やそこにある思いなどに共感を覚えることはあります。けれど同時に、尊敬の思いを抱くことがほとんどです。


さまざまな楽器を演奏していますが、自分の表現に最も近い楽器は何ですか?


KT:ダイレクトに表現できるものを挙げるなら、今はパーカッションかもしれない。音楽にはリズムとメロディがあって、リズムは感情を豊かにするもので、メロディは人の複雑な感情の奥にまで入っていけるものだと思う。僕はメロディを奏でる鍵盤やフルートも演奏しますけど、リズムを奏でるパーカッションが今はよりダイレクトに感じる。将来的にはあらゆる楽器ともっと仲良くなって、さらに感情豊かな音楽を表現できるようになりたいですね。


全ての楽器演奏とプログラミングを自身で行なっていますが、そうすることの利点は何でしょうか?


KT: 思いを早く形にしたいという気持ちが強いんです。それに、楽器が目の前にあるととにかく触りたくなる。何でもやってみて、すると「もっとこういうふうにしたい」という思いがどんどん出てくるから、気づくと全てを自分でやっている。必然というか、自然な流れなんです。その中で楽器と仲良くやれる時もあれば、悔しい思いをする時もある。でも、そうやって思いを形にすることで、その音楽を聴いてくれた人が何かしらのレスポンスをくれる。自分にとってはそれがとても嬉しいことなんです。


制作の際は、前述のようなストーリーや情景を音にしていくのですか? もしくは、フレーズから広げていくのですか?


KT:その時々によって違いますね。例えば、2002年に発表した「Precious Hall」は、感謝の思いを込めて作った曲。今の自分に繋がる大きなきっかけのひとつが、札幌にあるクラブPRECIOUS HALLでの音楽体験で。だから、曲の根っこにあるのものは感謝の思いだけで、その思いを形にせずにはいられなかったんです。その一方で、何もないところからストーリーが生まれることもあります。鍵盤を1音弾いた瞬間にストーリーが広がり、それを形にしていったり。だから、制作の始点となっているものは楽曲によってさまざまですね。


では、どんな楽曲制作においても一貫していることはありますか?


KT:自分が音楽に対して「あってほしい何か」を必ず探します。それはストーリーだったり、誰かに対する感謝の気持ちだったり。余計なものは欲しくないし、自分をさらけ出したいんです。それは決して恥ずかしいことではないと思っているし、そうしないと気が済まなくて。


自身の音楽が持つ世界観はどのようなものだと捉えていますか?


KT:世界観というか、形に例えると「山」だと思います。山には必ずピークがあって、そこに到達するまでの風景があり、想いや時間がある。そして、それらを経て頂上に辿り着くからこそ感じることのできる世界や歓びがあると思うんです。僕の作る音楽は全て、そうした「山」の形をしているんですよね。


制作の過程において最も嬉しい瞬間は?


KT:いろいろあるけれど、「何が生まれるんだろう」とワクワクする期待感ですね。


完成時の達成感よりも、あらゆるタイミングでの期待感ですか?


KT:僕の場合、ひとつのものが出来上がると、その瞬間にはもう次のことをやりたくて仕方がないんです。音楽に対する気持ちは中途半端なものではないので、出来たらそれで終わりということでは決してないのですが、出来上がった曲は、他の人が聴いてくれることで育っていくような感覚がある。それに、自分の中から湧き起こる「何かを生みだしたい」というエネルギーは大事にしたい。人間だから弱い部分は当然あるし、だからこそ強くなりたいと思い、炎や情熱が生まれる。それを消してはいけないと思うんです。これは音楽に限った話ではなくて、普通の生活においても言えることだと思います。


制作のアイデアは尽きないですか?


KT:尽きないんですよね。誰もが悩んだり苦しんだり、スランプと言われるような時期を通っていると思うし、もちろん自分も例外ではありません。僕はあまり人には見せないけれど、そうした背景も多分に持っている。けれど、それよりも「生む力」のほうが遥かに強くて、また、それが自分にとってのエネルギーにもなっている。あと、仲間の存在も大きいですね。どんなに離れていても、彼らも何かを生みだそうと頑張っていると思うと、自分も立ち止まってはいられない気持ちになります。


札幌を拠点にしていますが、その環境は自身の制作活動にも何らかの影響を与えていますか?


KT:それはありますね。札幌にいる理由やその利点などをよく聞かれますが、札幌は自分が基本に戻れる場所なんです。音楽を共に大事にしていける人がいて、考える時間、自然と向き合う時間、音楽を聴く時間、そうした時間を有することができる場所であり、思いを形にできる場所。だからこそ、僕にとってとても特別な場所なんですよね。


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