Creators' Talk

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THE NORTH FACEを知るクリエイター達へのインタビュー

Toshinori Kondo

www.b-t-earth.jp

近藤等則
1948年愛媛県今治市生まれ。78年にNYへ移住、世界121カ所でのライヴをこなし、83年、商業的成功を捨て日本へ帰国。イスラエルのネゲブ砂漠での演奏を皮切りに「地球を吹く」プロジェクトを93年より始動。その後、ペルー、アンデス、ラダック、ヒマラヤ、アラスカなど、世界中の聖地にて演奏。2007年より日本を舞台に「地球を吹く in Japan」を開始。一方、01年には、ダライ・ラマ14世の指名により「世界聖なる音楽祭・広島2001」をプロデュース。今年7月の皆既日食には沖縄・伊平屋島で「皆既日食を吹く」を開催。世界を縦横無尽に飛び回るエレクトリック・トランぺッター。










interview

新しい音色を求めてトランペットにデジタル技術を導入し、また、聖地とされる大自然での演奏「地球を吹く」を続ける近藤等則は、その活動姿勢だけでなく、歩んできた道のりも、作り出す音も、唯一無二のトランペット奏者といえる。そんな彼への取材のため登戸に向かい、彼のスタジオがあるという雑居ビルを尋ねた。ドアを開けると、研ぎ澄んだ音の粒が一瞬にして心と体に満ちて、背を向けて吹奏する彼へ、すぐには声をかけることができなかった。皆既日食での演奏のため沖縄への出発を控えた彼へ、あらゆる質問を投げかけた。


近藤さんが初めてトランペットに触れたのはいつですか?


Toshinori Kondo(以下TK):中学でブラスバンド部へ入ったのがきっかけ。それぞれの楽器によって性格との相性があると思うけど、短期で能天気な自分にはトランペットが合っていたんだ。ピアノであればこれほど長くは続いていなかっただろうね。


トランペットという楽器が持つ魅力や特異性を、どのように捉えていますか?


TK:楽器には、管楽器、弦楽器、打楽器の3種類しかない。その中で、呼吸によって音を出すのが管楽器であり、それがトランペット最大の魅力。無意識と意識のバランスを調整する時や瞑想状態に入る時なども呼吸法を用いるように、呼吸というのはあの世とこの世を繋ぐもの。さらに、人間の深い精神や肉体と直結している。自分はその呼吸を表現したいと思っているんだ。


音楽をコミュニケーションの方法として捉えた時、音楽だからこそ伝わることがあると思いますか?


TK:「神の声を聴け」という言葉はあるけど、「神の顔を見ろ」とは言わないよね。聴覚には神秘的な部分が含まれているんだと思う。目を閉じることはできるけど、耳を閉じることはできないし、寝ている時でも耳は聴こえているから、危険を察知することもできる。聴覚が人間の本能的な部分と結びついている器官だとすると、音楽に限らず、音自体と命に繋がりがあるんだろうね。


「地球を吹く」のプロジェクトは、どのような経緯で始めたのですか?


TK:ジャズだけでなく、ブルース、ロック、ポップスまで、20世紀の音楽のほとんどは大都市の中で作られてきた。だけど、都市から得るイマジネーションやインスピレーションは使い尽くされて、もはや都市からは新しい発想の音楽は登場しないと思った。21世紀の音楽がどういうものなのか、明確な答えはわからないけれど、とにかく挑戦してみようと「地球を吹く」を始めたのが15年前。そうして自然の中へ飛び込んでみたら、想像していた以上に気持ちがよくて、やみつきになってしまったんだ。


都市と自然、環境の違いにより自身のモチベーションにも変化はありますか?


TK:都市で吹いている時は呼吸が短い。あと、人間を相手にしているとビートが生まれ、フレーズも短くなる。大自然の中で吹くと呼吸がずっと長くなり、ゆったりしたフレーズになるね。息を吐き切ると気持ちがいいし、次の息が自然と入ってくる。大自然の中にいると人間はちっぽけだと言われるけど、そうではなく、大自然の中でトランペットを吹いていると、「地球と一緒にいる」という思いが強まり、自分の身体感覚が自然の大きさと同じくらいにまで広がっていくんだ。


自然と共鳴した時に得る感覚とは、どういったものですか?


TK:まず、呼吸によって自然と共鳴することができる。アンデスに1ヶ月滞在した際は、日が経つにつれ自分の体と自然が徐々に繋がってくるのがわかった。3週間ほど標高数千メートルの山の上で過ごし、リマの街まで降りた時、普段はやらないギャンブルを試してみたら、ものすごく直感が冴えて大勝ちしたほど。人と情報が溢れる現代都市で生活していると、あまりに忙しなくて、何もせずにぼーっとする時間が持てないんじゃないかな。でも本当は、そうした“何もしない”時間が最も大切で、充実している。生きている実感が得られる時間のはずなんだよね。


観客を前に演奏する際と、大自然の中で吹く際とでは、明確な違いはありますか?


TK:自分はいつでも命に向かって吹いている。観客はもちろん人間という命だけど、大自然だって無数の命。人間と他の命を分けて捉える必要はないし、道ばたに咲く花に語りかけるほうが、人間同士のコミュニケーションよりもよっぽど楽だよ。それに、自然の命へ向かって演奏することは最高に気持ちがいいんだよ。


「地球を吹く」では2007年から日本を舞台にしていますが、日本へ目を向けた理由は?


TK:十数年間、世界の大自然の中で吹くことに集中し続けて、2003年に熊野で吹いた時「日本に戻ってきた」という思いがあった。その後、友人から「日本でやってはどうか」と話を持ちかけられ、四季を吹くのであれば日本でやるのもいいだろうと。日本には大自然は無いけれど、四季がある。そして、「地球を吹く」の春夏秋冬バージョンを始めることになったんだ。


以降、改めて気づいた日本の自然の魅力は?


TK:アンデスのような厳しくて険しい大自然とは異なり、日本の自然は優しくて柔らかい。だから、トランペットもアンデスで吹くような強い感じでは、日本の自然とは共鳴しない。いずれにしても、自然の中で自分が感じるとおりに吹いている。


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