Creators' Talk

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THE NORTH FACEを知るクリエイター達へのインタビュー

kamikene

www.hatos.org

kamikene(hatos, normalization)
アート・ディレクター/グラフィック・デザイナー。さまざまなクリエイターからなるhatosの一員。ミニマムでストイックなデザインからアナログな手法のコラージュ作品まで広範囲に渡る作風にあって、一貫として安心感を覚える芯の通ったデザインには、多くの雑誌、ブランド、レーベルから信頼が寄せられている。『+81』へはVol.15から参加。以降、Vol.25、29、32の表紙デザイン他、多数のページを担当。他にもURBANVOICE、supeRbなどの雑誌、TIGER、kuniyuki a.k.a. koss、DJ KENSEI、DJ KRUSHなどのアナログやCDスリーブ、THE NORTH FACE、BURTONなどのTシャツや広告他を手がける。









interview

本誌『+81』のエディトリアル・デザインを始め、THE NORTH FACEが発信する広告ヴィジュアルやインビテーションなどのデザインを手がけるkamikene。初回のCreators' Talkでは、そんな彼のデザイナーとしての道のりやデザイン観に迫る。2年前、友人と共にhatos inc.を設立し、新しい環境の中で仕事の幅が広がる一方、純粋な感性はさらに透度を増しているようだ。


グラフィック・デザイナーとして影響を受けた人物や作品は?


もちろんデザインからの直接的な影響もたくさんあるはずだけど、それよりももっと、音楽を通じて感じたことのほうがより深く印象として記憶に残っていくんです。初めてのMetamorphoseでのDJ KENSEIのプレイを聴いた時、彼の人生に蓄積された全てのものによって1つの世界が作られていると体感した。強烈な衝撃を受けたし、それによって自分のデザインに対する姿勢も変わった。それまでデザインは仕事として割り切っていたけど、自分の中に息づく全ての感情や感覚をデザインに反映させないでどうするんだって。だから、ライヴで自分を解放して自由に踊る気持ち良さ、曲や歌詞へ抱く共感、パーティでの幸せに満ちた一体感、それから、音楽作品から感じる純粋な表現や美しい世界観とか、音楽を通じて心に受けた衝撃や生じた感覚が、今の自分のデザイン制作には大きく反映されていると思う。


デザイナーとしてのここ数年の変化を教えてください。


仕事の依頼を受け、その内容や相手の希望を聞いた上で、最初に「これだ」と思ったものをきちんと突き詰めるようになった。いろいろと勘ぐったり、考え過ぎた時期もあったけど、自分の直感を信じて作りきらないと何も始まらないって気づいたから。あと、環境的に大きく変化したのは、会社としてhatosを設立して、それまではそれぞれの場所で活動をしていた石阪(フォトグラファー)とRei(ペインター)の2人と毎日席を並べるようになったこと。彼らとは長い付き合いで、家族のような関係。だから、言葉にしにくい微妙なニュアンスまで感じとって会話ができるし、1つのアイデアを一緒に発展させていける。それに、石阪と組むことで写真という表現方法が新たに加わり、自分1人では作り出せない面白い制作ができるようになったと感じています。


デザインをする上で大切にしていることは?


自分が一番大切だと思うのは、ディテールへのこだわり。アート・ディレクターという職業が世間でもてはやされていた時期があったけど、全体のアイデアや雰囲気を決めて指示をするだけの役割にはずっと違和感があった。実作業での1つ1つの判断や、ディテールの積み重なりこそが全体を作ると思っているから。それに、最初に仕上がりをイメージしてしまって、それを目指す作り方だと、手堅いものはできるだろうけどミラクルは起きない。それがプロとしての確実な方法だとしても、直感やひらめきを信じることも重要。到着点を決めずにその時々のひらめきに任せて作っていくと、時に驚くようなミラクルが起こるし、強いパワーを持つ作品が生まれると思っています。


自身のデザインによって、それを触れる人とどんなコミュニケーションを図りたいですか?


スリーブ・デザインを筆頭に、世の中のデザインには「どれだけ目立つか」という考え方が蔓延している。けど、そんなふうに人の心を操作したり、一定のイメージを押し付けようという思惑を含んだデザインは、ちっとも面白くない。自分は、デザインするものの本質や魅力を、着色することなく純粋に伝えるような表現がしたい。パッと見の派手さがなくても、その奥にさらなる魅力が潜んでいそうな匂いを感じさせるデザイン。だから、どんな内容の仕事であっても、その中に自分がいいと思える部分を必ず見つけ出して、それを表現するよう心がけている。売れるためだけのデザインではなくて、じっくりと人の心へ伝わるデザイン。表面的なデザインには世間もいい加減嫌気が差していると思うし、この先の世界では、そうした純粋でシンプルな奥深い表現が、結果的にセールスへも繋がるようになっていくと思います。


ここ数年、白い粒や煙を使った表現や、ジオラマのような立体による表現など、シグネチャー的な手法を目にしますが…


デザイナーは新しいアイデアや違う手法を毎回提示していくべきだと思っていた時期があった。けど、1つの手法を突き詰めていくことで、その手法は進化していくし、表現も面白いものへと発展していく。その過程で違うひらめきが生まれたり、新しい手法へと繋がることもある。そういった意味で、最近手がけたSpanovaのイメージ・ヴィジュアルは、自分がこれまでにやってきた手法の進化型と言える。音楽機材やSpanovaをジオラマのような感覚でレイアウトして、そこで実際にライヴが始まり、その場に流れる空気や鳴る音まで含めた新しい1つの世界を、現実世界の中に、アーティストと共に創り出す、いわばジオラマの実写版のようなヴィジュアルです。このヴィジュアルは時期が来たらSpanovaのサイトで公開されるので、ぜひ見てほしいです。


デザイナーとしての今後の目標は?


THE NORTH FACEの仕事を始め、これまで継続してやらせてもらっている仕事は今後も続けていきたい。一緒にやっていくことで信頼関係をより深くして、作るものも進化させていきたいから。あと、尊敬するアーティストでもあるSpanovaとのセッション(仕事)には、自分でも大きな可能性を感じているので楽しみです。それから、今まで毛嫌いしていたウェブの仕事も、サカナクションのウェブ(11月中旬公開予定)制作を手がけたことで、最近ようやく面白い表現の可能性が見えてきました。


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