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AFRICA 世界で一番危ない場所 |
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ある女性誌がリゾートとしてのアフリカに注目して「今、アフリカが面白い!」的な特集をやろうとしたところ、各方面からトラブルを増やすことになるからやめてくれとのお叱りを受けたという。確かにアフリカは危ない大陸で、女の子が気楽に個人旅行できるような環境はあまりない。その中でも最も危険な街として知られているのがJohannesburgヨハネスブルグ(短縮してJorburg/ジョーバーグと呼ばれる)。 |
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な、の、で、す、が。僕はそういうことはあまり深刻に考えないタイプなのでフラリと旅に出て、四ヶ月ほどアフリカ全土を旅してました。 今回は二度目のアフリカということもあって多少の慣れもあったのでしょうが、それはそれはもう最高にハッピーな旅でした。やっぱりアフリカのど迫力の大自然はケタ外れに感動するし、どの国の人々も陽気で人なつっこくて世話焼きだし、食事だって本当、文句なく美味しかった。ガスのない場所が多いから基本的に炭火でじっくりコトコトやってるし、肉や野菜は言わずもがな新鮮そのものですから。 最高です。さらにケニアやタンザニアなどのスワヒリ圏内に行けばスパイスの文化もあるので、そこに各種スパイスが加わって食事のクオリティなんか結構高いのです。いやぁーアフリカは最高だ最高だ、なんていいながら旅してるとだんだんと黒いアフリカの奥地へと入っていくようになって、徐々に「危ないアフリカ」という先入観も過去のモノになっていった。知識に頼らずに出会った人の顔つきや目を見て直感的に物事を判断するようになっていったんです。すると先に書いたアフリカの犯罪状況が少し理解できるようになってきました。要するにそれは田舎のメンタリティなんです。犯罪心理も用意周到な先進国的なものはほとんどなく、行き当たりバッタリの後進国的犯罪です。どういうことかというと、いけそうな奴がいたからついヤッちゃった、ということです。 だいたい犯罪に対する理性的な意識の壁はあらかじめ低いですから、財布が尻ポケットからはみ出してるような人が目の前を通り過ぎたとしたら、そりゃあ殴って取っちゃうよ、と。なんか目立つ腕時計をしてる人がいて、その人があんまり弱そうだったからつい殴っちゃったんだ、と。基本、そういう感じです。データで見るとなんだかものすごく恐ろしい場所のようですが、実際はそこまでではありません。粗にして野だが卑ではない、というのが僕の印象です。 ある日の午後。プレトリアにあるトランスバール博物館でウロウロしていると、「人類の祖先フロア」でものすごく奇妙な模型に遭遇した。 大きな鳥に食べられている類人猿の模型。なんだか気味が悪い…。その下のコメントも簡潔にして無情、一分の隙もない。 一瞬なんのことだか理解できず曖昧な表情を浮かべてしまったが、さらにショッキングな隣の模型が目に入ってきたので、さらに二歩ほどスライドしてみた。 人間がヒョウにバックリと頭を食べられ血まみれになっているそのビジュアル。例えそれが模型だとは言え、なんだか素通りできないほどやりきれない光景だった。あまりにもリアル過ぎた。しかしだからこそこの奇妙なパラダイムにするっと入り込むことができたのかもしれない。 猿人から原人へと移行してゆく2億年前のアウストラロピテクス・ロボタスと、1億5千年前に存在した人類の祖先ホモ・ハビリスの模型。 その生きた証しとしての化石が模型の横に陳列されることで、さらなる現実味を加えている。この時代、こういう生物がいたのだ、と。 結局は武器を使うことを憶えたホモ・ハビリスが約1億年前にホモ・エレクタス、俗に言う原人として生き残ることになるのだが、猿とも人間ともつかないこの弱い動物たちの卑屈な生き様は、なぜだかものすごく胸に突き刺さった。 イーグルに怯えて洞穴に逃げ込んでいるその情けない姿はどうやったって他人事ではなかったのだ。 腰を据えてその模型の世界に入り込んでいると、この時代の恐怖もまた僕のDNA情報として自分の肉体のどこかに流れているのだなぁ、と神妙な心持ちになってきた。ああ、偉大なる兄者よ。いにしえ古の我がご先祖さまよ…。その無念、きっとこの貴之めが果たしましょうぞ…。 「見てー、これ! 猿だよ、猿ぅ。ヤバくない? 鳥に食べられてんの~。ウケる~。っていうか超ウケる~」 キッズだった。小学校の課外授業かなにかだろう。アフリカン・キッズが10人くらいわらわらと僕の足下にやってきて、その模型に超ウケている。僕はといえば、明らかに気分を害して不貞腐れていた。悠久の時の流れにやりたい放題想いを馳せていたのに、ギャーギャーとうるさいキッズどもめ。 あっち行け、このクソボケがぁ。オラ、行けよ、なんて毒づいていたら、そこに先生らしき人がやってきて突然大きな声で場の空気を一変させた。 「はい、いいかーい? これ分かるかーい? …そうだなー、昔の人間だな。ちゃんと働かないと、人間も生態系のピラミッドの頂点にいられなくなっちゃうってことだなー。そうだなー。武器を買うお金がなかったらヒョウに襲われた時にヤラれちゃうだろうし、仕事もしないで昼間から河原でボーっとしてたらイーグルに食われちゃうよなー。みんな分かるよなー!」 キッズたちは一斉に声を上げて、なにやら叫んでいる。間違いなく今のコメントにヘンな熱いツボを刺激された様子で、急激に盛り上がっている。 僕はただただ、そのダイナミックな展開に気を呑まれていた。あまりにも自分と違うその解釈に逆に興味が湧いたので、しばらくそのダイナミック先生についていくことにした。その顔がKRSワンというラッパーに似ていたせいかも知れないが、凛としたその眼力はなにかを感じさせるものがあった。 「はい、いいかーい? 注目、注目! コラ、騒がない!! …はい、いいかーい? ここにいっぱい動物がいますが、みんな全部の名前分かるかーい?」 「分っかるーっ! 俺、全部言えるって!! これセグロジャッカル。それニャラ。これグヌーでしょバブーンでしょディクディクでしょ…。アリ? これなんだっけ? ギャハハ…」 生徒たちは我先に声を上げ、先生の注目を曵こうとする。その光景は日本の小学校のものとなんら変わりない。無邪気ないい光景に僕も思わず目を細めてしまう。 「はい、いいですかー? 動物には3種類あるよなー。みんな知ってるとおり、ワイルド・アニマルと、ペット・アニマルと~? …そう、ファーム・アニマルだよなー。そうだよなー。はい、このフロアではー、ワイルド・アニマルの進化を勉強しまーす!」 僕、知らなかったです。動物を3種類に分けることも初耳だったし、ペット・アニマルとかファーム・アニマルとか言ってるその単語自体も全然ピンとこなかったです。気分的になんとなく脱落してしまった僕はその場のソファに座り込んで考え込んでしまいました。 3種類の動物…。分ける必要性…。ふむぅ、国家もいろいろ、教育もいろいろ…か。しかしながら先生のこの言葉に偽りはなかった。アフリカでは、確かに動物を3種類に分ける必要性があったのだ。それくらい動物との付き合い方が日本と違うのだった。中でもペット・アニマルに関しては大きく感覚が異なるので、少し説明しておきましょうか。 「とても美味しそうな食べ物だね。きっとすごくおいしいんだろ? おいらそんな立派んな立派なもの食べたこと 確実に目でそう訴えかけてくる。みんながみんなきた来るべき瞬間を今か今かと待ち望んでいる。 いい子なんですよ、みんな。日本の子供と違ってアフリカの子供は我慢強いし、曲がったところがない。 アフリカは世界中から大きな援助を受けている。諸外国の協力のもとに橋や道路が整備され、少しづつ資本主義的な発展を遂げている。 |
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アフリカは今、急速に都市化しようとしています。マサイのように民族衣装を着る部族的な慣習は各地で失われていて、みんな普通にオシャレを楽しんでいます。女の子はかなりマメに美容院に通ってるし、ビヨンセばりにばっちりキメてるコも多い。 携帯電話も持ってる人が多くて、その普及率には目を見張るものがあります。都市部は徐々にそういう世界になりつつあります。 この悲惨な状況は世界中の良識者たちに「ただちに解決すべき問題」と認知されていて、各国の研究が順調に進めば何十年か先にはマラリアの特効薬も開発されることでしょう。先進国としての使命はむしろ、最新のテクノロジーを駆使して新薬を開発し、より多くの命を一斉に救うことなのだろうと思います。しかしアフリカから帰ってきたばかり僕はまだそんな気分にもなれないのです。 ボランティアやエコロジーなどとは無縁の世界で暮らしてきた僕ですが、このマラリアのことだけはどうにも頭から離れないのです。 そういう意味では僕もまた、昆虫とのディスタンスがあまりない生物なのだろうと思います。アフリカ大陸でもっとも恐ろしいもの、僕にとってそれは間違いなく蚊でした。 旅の間、アフリカ各地で蚊に刺されて皮膚がボコボコに腫れている赤ちゃんを見ることは、イーグルに食べられてるご先祖様の模型を見るよりも、はるかに心が痛んだのです。 堀内貴之 |
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